「絶対安全」という言葉


       医療現場

 

医療をやっていると、「絶対安全」と
いう言葉はないんじゃないかなと思う。

大学で教わった「限りなく安全に近い
対策」は日々実践していますし、何が
起きてもいいように万全を尽くしてい
ます。

こうなった場合はコウする。
ああなった場合はアアする。
マイナスの要因は1つずつ消していく。

でも絶対安全という言葉は使えません。

臨床をやっていると、対象が生き物なだ
けに、想定外のことが起こることもあり
ます。

だから、「絶対安全」というのは、ただ
の言葉。

「絶対美人」「絶対大きい数」と言って
いるのと同じ。

絶対美人ってどこにいるの?
数だって、いくらでも大きい数があり
ます。

それと同じくらいイミのない言葉だと
思う。

「絶対安全」を求める人がいますが、
絶対安全なんてものはこの世には存在
しないんじゃないかな。

神様からのプレゼント


      動物あれこれ

 

イソップ童話には、どういうわけか
「神様が人間をつくられた時・・・」と
いう始まりがいつも出てきます。

どの場合も、神様は人間をこのように
つくられたので、使い方をよく知った
上でうまく生きなさい、という内容です。

まぁ、人間の取扱説明書です。

「昔、神様が動物をつくられた時、それ
ぞれの動物にふさわしい力をプレゼント
されました。そのお蔭である動物は強い
爪を、ある動物は大きな翼を、ある動物
は速い足を与えられ、それぞれの動物ら
しい生き方ができるようになりました。

ところが最後につくられた人間の番にな
ると、用意していたプレゼントが品切れ
なってしましました。どうやらずるい動
物がいて、プレゼントを2つ持っていっ
たようです。

困った神様は『仕方がない。私の物を少
し分けてやるとするか』と言って、理性
と知恵を分けて下さいました。そして、
人間という動物になった。

まぁ、古くからいる動物から見れば人間
は頭はいいかもしれませんが、エゴイス
トで暴力的。他の生き物を排除して地球
をわが物顔で汚し、百害あって一利なし。

早く絶滅してほしいと思っているのでは
ないかな。

聴き上手な人

(イメージ)

 

話をしていると、聴くのがうまいなぁ
と思う人がいます。

気持ちが通じているのかなぁと何となく
思えて、そんな場合、こちらも話がドン
ドン出てきます。

たぶん“聴き上手な人”っていうのは、
こちらの「話したい」という心の鍵を
開くんじゃないかな。

うなずくタイミングとか、間を埋める
コメントとかで。

話すほうには話の「聴かせどころ」とい
うのがあって、その「聴かせどころ」に
ピタリとはまって「はい!」と来られる
と、「いやぁ、まいったなぁ。呼吸がピ
ッタリだ。」という感じがして嬉しくな
ります。

見事にこちらと呼吸が合って、ピタリと
うなずくとか、わずかに目配せするとか
目をキラッと輝かせるとか、そういう天
才的シグナルを出すのがうまい人っての
は、やはり聴き上手なのだと思う。

男は頭の中にハトを飼っています。

ハトから見た光景(下は知事公館と近代美術館)

 

ワタクシ、札幌駅より北側の地理はまあ
まあ詳しいのですが、南側はなじみが薄
いせいか、道路のイメージがいまひとつ
ピンときません。

そこで、昭文社のスーパーマップル『広
域札幌圏道路地図』をクルマに備え付け
ています。

男は頭の中にハトを飼っているので、
地図が読めるのです。

ですが、うちの奥さんに聞いたところ、
どうやら女性は地図を読むのが苦手らし
く、でもその代わり人間関係の空気を
読むことには敏感らしい。

地図に関して言えば、今はカーナビがあ
るから“ハト男子”もあんまり尊敬されな
いんだろうなと思ふ。

血管はウソをつけません。

 

よく思うのですが、昔と違って、ヘアカ
ラー・メイク・ファッションなど、見た
目はだいぶ演出できる時代になりました。

とてもいいことだと思います。

でも、どんなにカラダの表面が飾れても
血管はウソをつけません。

ところで、「体力には自信がある」とか
「心臓には自信がある」が口グセのよう
な人ほど、ちょっと血管、危ないんじゃ
ないかな。

自信があるからこそ、バリバリ働いて、
疲れが残っていても日曜日は朝から予定
を入れて、血圧が高かったり気になる症
状があってもやすんだりもせず、食事や
生活習慣を見直さずに、血管や心臓に
過度な負担をかけてしまっているからで
しょう。

このようなタイプの人は、まぁ、責任感
が強くて、物事に熱中しやすく、熱中し
ている間は他のことに気持ちの切り替え
がしにくく、自分が関わる以上、完璧に
やり遂げなければ気が済まない。

そして競争心も強くて、勝気なあまり完
璧に実現できなければイライラしたり、
時には周囲の失敗が許せなくて攻撃的に
なってしまう。

ストレスを内にどんどん溜め込んでしま
う人も、ちょっと危ない。

例えば、子どもがなかなか朝起きてくれ
ない、ご飯の用意ができたのに子どもは
食べようとしない、テーブルの上を片付
けたいのに、子どもはまだ食べている。

こんな些細なことでも、血圧は上がるの
です。

じゃぁ、「血栓を溶かす納豆を食べてい
るから大丈夫じゃない?」という話にな
りますが、確かに試験管の中ではナット
ウキナーゼが血栓を溶かす作用を発揮す
るのは正しいのですが、人体の血液の中
に入り、心筋コウソクの原因の血栓を予
防してくれるかというと、残念ながら期
待できません。

医者流に言うならば、まぁ、「効果が期
待される」ぐらいでしょうか。

患者さんはその言葉を聞くと「治るんだ
ぁ」と勘違いしてしまう。

ネコには、昔から人があげた残り物を食べる習慣があるダケ。

猫パンチ

 

理科は「なぜ」と考えると面白くなる
学問です。

ワタクシにも「何でだろう?」という
疑問があって、例えば、フィリピンの
養鶏農家付近に住みついているネコ。

まぁ、野良猫たちですが、そのあたりは
湿地帯なのでヘビがうようよいます。

ネコがヘビに一発、猫パンチをお見舞い
する。

するとヘビは、口を大きく開けて猫を
威嚇します。

ヘビはそのうち疲れ切って、最後に猫パ
ンチでノックダウン。戦意喪失。

そして猫は、「いただきます」とおいし
そうにヘビを捕食します。

フィリピンの猫はヘビを主食にするんだ
なと、それまで勝手に思っていました。

ところがある日、動物学者のある偉い
先生が次のように言っている記事を見つ
けて、目からウロコが落ちました。

**************************************

日本では「ネコは魚が好き」とされて
いる。なぜか。

実はインドではカレー、イタリアでは
パスタが好きだと言われています。

ネコには昔から人があげた残り物を食べ
る習慣があるだけなんです。

***************************************

なるほど、フィリピンのネコは昔から
ヒヨコを狙ってやってくるヘビを食べろ
と、人が習慣づけたのかもしれません。

猫にもよし、人間にもよし、ヒヨコにも
よし。三方よしダ。

母親の「みんなと同じであれば多分、大丈夫だろう」という育児戦略

ライオンに襲われるヌー

以前、BSで観た「ワイルドライフ」の
話です。

そこでは、ライオンが群れの中の一頭の
ヌーを襲っていた。

運悪く食われるヌーは、フツーは一頭
だけ。

ライオンは一頭食えば満腹になって、
しばらくは襲ってきません。

100頭いれば、自分の食われる確率は
1%。
1,000頭いれば0.1%。

ヌーたちはそういう計算をする。

それを観ていて、母親の子育て戦略と
同じだなぁと思いました。

みんなと同じなら多分大丈夫だろうと
いう戦略。

「わが子は弱い」というのは、お腹の
中に10ケ月子どもを身ごもっていた
母にとっての生物的な直感。

だって、母親のわずかの不注意で子供は
流産するかもしれないし、強い衝撃を与
えたり興奮したり、毒性の強い食べ物を
口にしたら子供は死んでしまうかもしれ
ません。

うちの子は同年代の集団の中で弱いので
はないか、何かあった時に仲間から遅れ
て取り残されるんじゃないか、という
不安を母は常に子供に対して持っていま
す。

生物学的にそうじゃないと困る。

母親は、うちの子には人に抜きん出た取
り柄がないと思っているからこそ、人と
同じように勉強させたり、おケイコごと
、まぁ英語とか水泳とかピアノなんかを
習わせたりする。

「誰にでもできることがうちの子だけで
きない」と想像するのがチョット怖い。

集団に入ってまわりのマネをして、特別
に目立たないようにすること、それが
母の育児戦略。

群れをつくってライオンから身を守って
いるヌーたちを観て、ふとそんなことを
思いました。

「名もなき家事」は、家の中に入った瞬間から始まる。

 

「床が濡れてるんだけど、何かこぼした
?」とうちの奥さんは言って、雑巾を濡
らして拭く。

ワタクシか、あるいは大きくなったチビ
スケがこぼしたからだ。

「こういう細々したものを“名もなき家
事”というのよ。テレビでもやってた」

どうやら、NHKの「あさイチ」という
番組で取り上げられたらしく、その名前
が全国的に定着したらしい。

掃除、炊事、センタクなどはわかりやす
い家事なのですが、その他にも目立たな
い、存在に気づかない、地味な家事がた
くさんあるのです。

家事を担当する人は、やってもやっても
終わらない。やらなければどんどんたま
っていく。

放っておけばゴミ屋敷に。

彼女によれば、「ゴミ出し」というのは
各部屋にあるゴミ箱のゴミをまとめて、
黄色い袋(市の指定のプリペイド袋)に
入れ、燃やせるゴミであればその収集日
にゴミ収集所に出し、空になったゴミ箱
に新しいゴミ袋をかけるまでのことを
言うらしい。

もちろん、ゴミ箱にゴミの汁が漏れてい
たり汚れている場合は、当然それを拭く
などの作業も含まれる。

「テーブルを拭く」というのは、食後に
食器を片付けた後にテーブルを拭いて、
その拭いた布巾を洗ってタオル掛けにか
けるまでの工程。

これももちろん、食後床に落ちている
誰かの食べこぼしを拾うことも含まれる。

「トイレットペーパーを補充する」と
いうのは、トイレットペーパーがなくな
ったら買いに行って取り付けたり、その
他の在庫を棚に並べるところまで。

まだまだある。

缶やペットボトルの分別、お風呂の髪の
毛フィルターの掃除、脱ぎっ放しの服の
片付け、洗濯物をキレイにたたんで各部
屋の引き出しに収納。

ワタクシやチビスケが消し忘れた照明の
消灯、なかなか朝起きてこないチビスケ
を起こす作業、誰かがソファに寝っころ
んだ後でズリ落ちているソファカバーを
整えること。

やってもやっても終わりが見えない、名
もなき家事。

「ゴロゴロしないで手伝ってよ。一緒に
出かけてて一緒に家に帰った時くらい、
一人だけゴロテレ(ソファにゴロッとし
ながらテレビを見る)しないでよ・・」

という無言の視線と無言の声が聞こえる。

「ハイ!できるだけ手伝うようにします」
と無言の声で答える。

たまに気を利かせて手伝うと、「そこじ
ゃない。順番が違う」と彼女にますます
ストレスがたまる。

それなら自分でやった方が早いと。

そうして負のスパイラルに。
こうやって名もなき家事はズルズル続い
てゆくのデス。

「このマウス、前は肝臓だったんだよなぁ。」

オガワメモ(受精卵の分化)

 

iPS細胞はカラダのほとんどの細胞にな
れるため、万能細胞と呼ばれています。

正確には、人工多能性幹細胞。

まぁ、100才の老人の細胞が生まれる前
の赤ちゃんの細胞に戻るようなものです。

例えば、皮ふの細胞を採ってきて、iPS
細胞でノーベル賞をとった山中伸弥さん
が作った4つの遺伝子を導入するだけで
、受精3日後の万能細胞に戻るんです。

いったんiPS細胞にすれば、培養の条件
を変えるだけで、それぞれ狙ったもの、
まぁ目とか心臓の心筋細胞とか、肝臓の
細胞になるということです。

 

オガワメモ

 

誰も、目から1回戻って心臓ができるな
んて、思わないじゃないですか。

でもそういうことができてしまう。

時間というのは、三次元の世界では戻ら
ないということになっているんですが、
時間が巻き戻っちゃった。

タイムマシンができたようなもの。

山中さんが以前言ってたんですが、「15
年位前、大人のマウスの肝臓の細胞をと
ってきて、iPS細胞をつくって、そのiPS
細胞から新しいマウスを作って、目の前
でそのマウスが走り回っているのを見た
時、コレ、前は肝臓だったんだよなぁ」
と。

オガワメモ

 

どうやら、研究者としてスゴイ技術だと
いう気持ちもあったのと同時に、こんな
ことしてホントにいいのだろうかと思っ
たそうです。

そりゃあそうです。

確かに医療や新薬を作るのに役に立つけ
れど、人間のコピーだって作れます。

現にクローン羊ができちゃったし。

極端に言えば、ヒトラーの骨の一部でも
残っていれば、ヒトラーが再び誕生する
ということですからね。

いやいや、ホントに怖い。

遺伝子の中のガラクタの役割

メインの遺伝子とガラクタの割合

 

ヒトに必要なタンパク質は、10万種類。

タンパク質をつくるために人の持ってい
る遺伝子の数は、約2万個。

これじゃあタンパク質が作れない。
というか、足りない。

1つの遺伝子の中で情報のあるところを
エクソンといいます。

また、1コの遺伝子の中に組み込まれた
ガラクタをイントロンと呼ぶのですが、
昔はエクソンだけを組み合わせてタンパ
ク質をつくるのだと考えられていました。

でも今は、情報を持っているエクソンと
1つの遺伝子の中に組み込まれたガラク
タ部分のイントロンを組み合わせてタン
パク質を作っていることがわかりました。

これなら2万個の遺伝子で10万種のタン
パク質ができます。

さらに、イントロンの外側にある遺伝子
の働きにエイキョウを与える部分(プロ
モーターやエンハンサーと言います)も
遺伝子の一部と考えられています。

なんのこっちゃよくわからないと思いま
すが、実はこの部分のガラクラも宝箱。

硬い話はこの辺まで。

 

遺伝子はDNAの一部です

 

実は、新型コロナとかそういう感染症に
ワタクシたちは今、苦しめられているわ
けですが、過去に感染したウイルスの履
歴も遺伝子のガラクタの中に入っていま
す。

DNAは未来の設計図だけではありません。
過去のも入っています。

それと、使われなくなった古い遺伝子も
あそこに入っています。

それこそ、ガラクタ。

昔は使っていたんでしょうけど、今は使
っていない。

で、新型コロナウイルスが体内に入って
くると、白血球の中のリンパ球(T細部)
が、それが大事にしまってあるリンパ節
のところへ探しに行きます。

「あった!昔感染した新型コロナウイル
スの抗体があったぞ。ようし、いっぱい
コピーして、血液中にいっぱいばらまい
て、新型コロナウイルスをやっつけてや
るぞ。エイエイ、オー!」。

というわけで、こんなガラクタでも抗体
を作ったりする時、すごく重宝だったり
するんです。

持ってたら何かの役に立つことがあった
り、これからもあるかもしれない。

それがガラクタの正体。

まだまだあります、ガラクタの役割。
それが、「的をはずす」こと。

ウイルスとか紫外線とか放射線が体内に
入ってきて細胞を壊そうとした時に、
このガラクタたちがいて、敵は「的はど
れかな」って。

カラダは「ガラクタのところに当たって
くれればいいな」と。

ガラクタに当たってもカラダに害ないし
、98%の確率で的を外れてくれるらしい。

ムダなようでいて、ガードしてくれるよ
うな、まぁ防弾チョッキ着ているみたい
なボディーガード。

一見ムダのように見えるんだけど、この
遺伝子のガラクタ、大切なんデス。

ブログ一覧