「熱伝導」をさつまいもを煮る授業で体験させた伝説の教師

空気の温度差が気流を生み、風になる

 

大正時代の話なんですけど、ある公立
学校に伝説の天才教師がいました。

それが、旧明石女子師範学校附属小学校
(現神戸大学付属小学校)の及川平治先
生。

例えば、小学5年生の「熱」という単元。

フツーは教科書に基づいて金属球やアル
コールランプなどの実験器具を使って
授業を行うのですが、コノ先生、それを
大胆にアレンジ。

「今日は皆さんにサツマイモを煮てごち
そうする。食べる気にばかりならないで
、イモを煮る順序と仕方を研究せねばな
らんよ」。

なんと及川先生、特別な実験器具を使わ
ずに、さつまいもでこの単元の授業を行
ったのデス。

まずは生徒たちにカマドに火を起こさせ
、部屋を暖めさせる。

「部屋の戸を開けてごらん。空気はどち
らから流れてくる?」

児童、「外から冷たい空気が入ってきた
ぁ~」。

先生は内と外の空気の温度差が気流を
生み、風を起こすのだと、自然の仕組み
を室内で再現してみせたのです。

そしてイモが煮えてくると、子どもたち
にカマドの口を閉じさせ、火が消えるの
を確かめさせる。

燃焼には空気が必要だと、カマドを通じ
て学ばせた。

そして、「あぁ、熱い!熱い!」

「さぁ、そのおイモの熱はどこから来た
のかな?」

「う~ん、おイモの熱はお湯からきてい
て、そのお湯はナベで暖められたもの。
そうか!カマドの火から熱は伝わってき
たんだ!」

「そう、それが熱の伝導というものなん
だ」。

この先生、イモを煮るという体験を通し
て、風の流れや燃焼、熱伝導といった
科学の基本原理を学習できると考えたん
です。

遠い昔、ワタクシが習った先生で、例え
ば「これは鉄だ。だから重い。重いから
持ち上げにくいのだ」っていう風に教え
る教師がいましたが、多分これは教え方
が悪い。

及川先生ならきっと、「これは鉄で、
持ち上げにくいネ。これを人は重いって
言うんだよ」と言うはず。

人は概念に出会って言葉をつけるのだ。

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