ではいったい、何が若い浪人生を難関大
学・難関学部に駆り立てたのか。
秘密は、教祖ともいえる数学の永井先生
と英語の橋本先生。
橋本先生のあの有名な「高級英文研究」。
文法も英作文も、点をとる小手先の技術
ノウハウも何もなく、ただただシュンと
しがちな、落ち込みがちな浪人生に超勇
気の出るすごい英文が並んでいる。
浪人生の心にエネルギー、生きる勇気、
合格への執念を注入していたのだ。
例えば
Heaven helps those who help themselves.
「他人に頼らず、猛然と努力せよ。努力
するものに初めて天が味方する。幸運と
は、今までの自分の積み重ねた努力が
必ずウラにあるのだ。オレ程努力したも
のは他にないと言えるほど、猛勉したま
えよ。執念で一発かましてやりたまえよ。
猛勉したまえよ、猛勉!」
もう一つ。
Nothing will be done if he only wishes.
「望んでいても何も起きやしない。やる
のだ、猛勉せよ。猛勉したまえ!」
橋本先生の「猛勉したまえよ、猛勉」。
教壇の上に、学生たちが置いたテープ
レコーダーが数多く並んでいた。
家に帰って何度でも聴くのだ。
寝ている時間以外はすべて勉強。
食事の時はもちろん、銭湯に浸かってい
る時、トイレに入っている時、果ては
歩きながらでも勉強する。
そういうことだ。
確かに京都はそういう所だ。
そして数学の永井先生の三題主義。
これは、本番の数学が6題出題されてま
ず、3題を確実に仕上げるというもの。
そして、煮詰まったら必ず窓を見る。
それはふっと「気」を転換させる技術の
のようなのだ。
座右の銘は「人生は学問、芸術、自然、
そして涙」。
授業は、英語なんかに関しては読むだけ
で実力養成にはならないけれど、授業中
の近畿生を励ます話には感情がこもって
いて、とても励みになる。
しかし永井先生も橋本先生も鬼門に入ら
れ、時代の波には勝てず、その後近畿予
備校は大手予備校にも食われて、私立医
科系の予備校として細々とやっていると
聞きました。
しかし、細々と息が途切れずやっておれ
ば、近畿の志を受け継いだ者がいつか
名門復活を成し遂げてくれるハズだ。
小さい者には小さい者にしかできない
闘い方があるのだ。