
リコール中のSさんの、目の中に入れて
も痛くない程可愛いがっている1人娘が
大学に入ったという。ほっと一安心され
ていました。良かったですね。次は就職
、次は結婚と、娘と一緒にいる時間が徐
々に少なくなって行きます。いずれ、お
嫁に行ってしまうのかなあ。遠くに行っ
てしまったらどうしよう、地元に残って
くれたらいいな,と。

患者さんのひとり娘が大学生になった
その時、ワタクシ昔読んだ、邱永漢氏の
『高い伝書鳩・安い伝書鳩』の話をふと
思い出しました。その話の内容はこうで
す。

『高い伝書鳩・安い伝書鳩』邱永漢著
ある歯医者が早く隠居したいと思って、
娘を歯科大にやり、あわよくば同級生を
連れて帰ってきて家を継いでくれたらな
あとムシのよいことを考えていました。

うちの娘は同級生を連れて帰って家を継いでくれたらなあと、ムシのいいことを考えていた。
ところが、伝書鳩に凝っていた小学生の
息子が友達を連れてきてこんな話をして
いるのを耳にしました。伝書鳩には一羽
1000円のものもあれば、1万円のものも
ある。どこに違いがあるかというと、一
万円の鳩は空高く飛び上がると仲間を連
れて帰ってくるが、1000円のハトは連れ
ていかれるという。

うちの娘はひょっとしたら安い伝書鳩で、連れていかれるかもしれないぞ、と思い至った。
それを聞いた歯医者はガク然として、
自分は娘がムコを連れて帰ってくること
ばかり考えていたが、うちの娘はひょっ
としたら安い伝書鳩で、連れていかれる
かもしれないぞと思い至ったという話。

その話を知ったワタクシは、ふと、コレ
、俺のことじゃねえか?と思いました。
うちの妻の実家は札幌。ワタクシの実家
は広島県。ワタクシは家督を広島の弟に
譲り、札幌に住み着き、開業しました。

私は家督を広島の弟に譲り、札幌で開業した。
娘を広島に連れて行かれると覚悟してい
た嫁さんの家族は喜びました。一方、広
島のワタクシの家族は口には出していな
かったものの、当時はショックを受けて
いたようです。ワタクシが地元の広島に
帰って来なかったからです。今は亡き父
は、開業する場所も用意して待っていた
のに。ゴメンね。うちの嫁さん、座敷童
なのよ。

その姿を見た者には運をもたらすと言われる座敷わらし
座敷童って岩手県に伝わるかわいい妖怪
で、座敷または蔵に住む神と言われてい
て、その姿を見た者には幸福が訪れ、家
に富をもたらすなどの伝承があるんです
よ。おかげ様で結婚してからは、人生が
マイナスから指数関数曲線のように好転
して行きました。

ウチの両親は最初はショック!でした。でも、嫁さんに会って安心したようです。
つまり、ワタクシは安い伝書鳩、妻は高
い伝書鳩だったのです。文字通り解釈す
れば、ワタクシは札幌に連れて行かれた
ことになります。でも実際は、私の意志
で札幌を選びました。違う世界で生きて
みたい。自分の力で勝負したい。チャレ
ンジしてみたい。お陰様で何者かにはな
れました。両親も嫁さんに会って、安心
してくれました。そして、私たちのこと
を応援してくれました。

『違う世界で生きてみたい、自分の力で勝負したい、チャレンジしてみたい!』『ヒロ君、頑張れ!』
今は亡き母がふと漏らした言葉が忘れら
れません。『うちのヒロ君は札幌へ行っ
て来ま~す!と言って出て行ったきり
そのまま帰って来なかったなあ』と。

うちのヒロ君、『行ってきま~す!』と言って出て行ったきり、そのまま帰って来なかった。
まあ、こんな話はよくあります。有名ど
ころでは、あの明治天皇陛下だって、京
都から『行って来ま~す!』と言って東
京に下り、そのまま150年ものあいだ京
都には帰って来ませんでしたからね。

明治天皇は東京に下られた後も、帰っていらしゃらない。

『天皇陛下、お出かけですか?レレレのレ』
まあ、天皇陛下に何か用事があって京都
にお越しになられた際、JRのお迎えの
お偉方が『お帰りなさいませ!』と言っ
ておられました。京都人には『うちの天
皇はんは東京に取られたわけではない!
』という意地がまだあるんですかねえ。
