その時、「あ~あ、歯学部でよかった」と思ったんです。

サボる学生が多かった

 

3、40年前の話なんですけど、大学入学
後、「歯学部でよかった」と思ったこと
がありました。

医学部、水産学部、歯学部は入学後2年
間は“単位が降ってくる学部”と言われて
いたんです。

あまり勉強しなくても単位が取れる、み
たいな。

昔、教養時代に講義があって、先生が
出席をとるんですが、まぁこんな感じ。

「天野」
「ハイ」
「岩崎」
「(ハイ!)」
「オガワ」
「ハイ!」
  :
「渡辺」
「ハイ!」
「和田」
「ハイ!」

返事はパーフェクト。みんなする。
だがしかし、数十名の返事があるのに
どう見ても教室にいるのは数名ダケ。

返事はあれど姿なし、とはこのことだ。
つまり、代返しとる。

先生ももうあきらめているんですけど、
たまに思い出したように怒る。

「うちの学校でケシカラン学部が3つ
アル。どこやと思う?」

「・・・・」

「医学部、水産学部、そしてキミたちの
歯学部や。この3つはアカン。みんなで
寄ってたかって単位ギリギリを狙ってく
る。他学部は偉いぞ。進振りというのが
あるから、2年の夏までの成績で行ける
学部学科が変わる。そこへ向けてみんな
めちゃめちゃ勉強する。それに対して、
医学部、水産学部、歯学部の連中はもう
行き先が決まっているからかどうか知ら
んが、単位ギリギリを狙ってくる。全然
勉強してくれへんというか・・・」

「まぁ、出席してくれとる君達に言って
もしょうがないんだが、頼むから学部へ
上がったらちゃんと勉強して、偉い先生
になってくれよ。頼むよ!」

とまぁ、こんな感じ。

そしてしばらくして学部に上がって他学
部の連中と話していると、これは物理の
話をしているんだなと思ったら数学の話
で、さすがにこれは化学の話だろうと思
ったら物理の話で、もうついていけなか
ったんです。

その時、「あ~あ、歯学部でよかった」
と思ったんです。

 

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