「銀の匙」といえば、明治時代の中勘助
の書いた自伝的な小説。
本棚の引き出しにしまった小箱の中にあ
る銀の匙をきっかけに、幼年期の伯母の
愛情に包まれた生活を回想する小説です。
この小説を中学3年間かけて1冊読み上
げる国語授業をした、伝説の教師がいま
す。
それが、兵庫県の私立N中の橋本武先生。
9年前に101歳で亡くなった名物先生だっ
たんですけど。
この先生、「生徒の心に生涯残って、生
きる糧となる授業をしたい」との思いか
ら、1950年新制N中で開始しました。
教科書を使わず、中学3年間をかけて
中勘助の「銀の匙」を1冊読み上げる国
語の授業。
毎回配布するガリ版刷りの手作りプリン
トには、頻繁に横道にそれる仕掛けが
用意されてて、いろんな方向への自発的
な興味を促す工夫が凝らされていました。
授業の流れは、「通読する→寄り道する
→追体験する→徹底的に調べる→自分で
考える→要約する→自作の『銀の匙』づ
くり」。
まぁ、この頃は終戦後で、教科書をスミ
で黒く塗りつぶしていましたからねぇ。
教科書はあてになりません。
確か養老先生も同じようなことを言って
いた。
ワタクシも、時々脱線する授業は大切だ
と思う。
あちこちにぶつかって、いろんなものを
学ぶチャンスが転がっていますもの。