吉田寮(京都大学)の話・・・(前半)

京都大学の吉田寮

小さい頃から診ている患者さんのT君は
あっという間に地元のH大生になり、夏
休みを利用して京都大学の吉田寮を訪れ
、1,2泊して来たと言う。

その時、T君、何か縁あって吉田寮の連
中と議論したらしいのですが、圧倒され
て帰って来た。おまけに得体のしれない
ムシに3ヶ所刺されていたというオマケ
付きだ。

吉田寮生は議論好き

そこには議論の怪物みたいのがいっぱい
いたらしく、ワタクシ、『いいモノに触
れて来ましたね。』と言うと、彼は『自
分がいかにモノを知らないかがわかり、
しっかり勉強せなあかんな。レベルの差
を感じて帰って来た!』と言っておりま
した。

木の生い茂っている場所が吉田寮

まあ、ソクラテスの『無知の知』ですな
。そうです。若い時に、外の世界に触れ
ることが大切なんですよ。そのきっかけ
は人であったり、時には本の中で出会っ
たりする。そこで自分は何を感じたか、
そして何を考えたか。男の子は2,3日
あれば、頭の中、モノの考え方が極端に
変わることがあるんですよ。

むかし、京都の先生がよく言ってたよ。
『人生は学問、芸術、自然,そして涙』

寮生は学問と芸術と自然を愛し、議論する

ところで、京都大学の吉田寮って何?
ワタクシも4,50年前京都に住んでいた
時期があり、当時、吉田寮のことはよく
耳に入って来ました。

『あっ、まだあるんだ!』何しろ、当時
からボロボロの廃墟みたいな寮でしたか
らね。

築111年目(大正2年築)当時からボロボロでした

京大の吉田寮は1913年(大正2年)の建築
という事だから、今年で築111年目。
今も200名ほどの学生が生活しており、
庭にはニワトリが放し飼いされ、クジャ
クやヤギの姿も見える。玄関にはカギも
かかってない。つまり誰でもはいれる。

ニワトリ、クジャクの放し飼い。のどかな風景

小説家の『檸檬』で有名な故梶井基次郎
氏や、この前『半導体・ⅬEⅮ』でノーベ
ル物理学賞を取った、赤崎勇氏など個性
豊かな文化人や学者達もここで育った。

『めぇー』ヤギは勝手に草を食べる。除草剤の役割をしているのか?いったい誰が思いついたのか?

イチョウ並木のずっと奥に廃屋のような
屋敷が見え、扉は開けっ放しで蛍光灯の
光が漏れている。

たくさんの自転車が並木に沿って乱雑に
留めてあり、傍らには壊れたバイクや廃
車、それらも無造作に置かれている。
いかにも怪しい人が住んでいそうだ。

壊れた廃車、バイクが転がっている

和装の学生がいる。理学部のY君だ。授
業に出る時も街へ出かける時も着物姿。
周囲にも
『着物を着てみてはどうですか?』
と勧める。

『あなたも着物を着てみてはどうですか?』

寮の建物に足を踏み入れると、長い廊下
が続いており、昼間でも薄暗い。散らか
った段ボール箱、汚れた布団、少し時間
のたった食べ物や汗、タバコの吸い殻の
匂いなどが混じり合って漂っている。
キノコも普通に生えている。

常識の世界から来た人に言わせれば,只
の廃墟、あるいは夜逃げ部屋。

この匂いこそが築111年目の吉田寮の
特徴。木の廊下や畳に沁み込んだ皮脂の
匂い、湿気やカビ・キノコの匂い。これ
こそが人が暮らしている『人間の匂い』
なのだ。

もしも、うちの奥さんがこの光景を見た
ならば、一も二もなく逃げ出すことであ
ろう。

       【続く】

 

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