怖い話は聞きたくないけれど、でも
チョットだけ知りたいものです。
昔、解剖学の先生だった養老孔子(仮名
)さんが、幽霊のことをこんな風に話し
ていました。
************
「先生などは幽霊を信じないで
しょうね」
よくそう言われる。
信じるも信じないも、まだ会ったことが
ない。
面白いことに、解剖学教室には幽霊話が
まったくない。
実習室は広くて、多い時には50人の
遺体が並ぶ。
三列にずらっと並んでいる。
いかにも出そうな場所にいると出ないの
が、幽霊らしい。
思わぬ時にフッと出る。
その方が怖い。
で、こんな話も。
人が死ぬとカラダが残って、“はたらき”
が消える。
そこで“はたらき”だけを、死体とは別に
何とか残そうとする。
それが幽霊になる。
その証拠に、幽霊には身体がない。
幽霊が身体をもつと、幽霊ではなくなっ
てしまう。
では何になるのか。
もちろん、ただの生きた人になる。
それじゃあ生きた人との区別がつかなく
なるから、幽霊の絵を描くと必ず、そこ
に約束事を含める。
日本製は幽霊に足を描かない。
西洋製はカラダを透明にする。
完全に透明にすると透明人間で目には見
えない。
見えなくては幽霊にならないので、半透
明にする。
どうやらこれが解剖の先生の幽霊観の
ようです。
そういえば、映画「ゴースト・ニューヨ
ークの幻」もゴーストは半透明だったよ
うな気がします。