「床が濡れてるんだけど、何かこぼした
?」とうちの奥さんは言って、雑巾を濡
らして拭く。
ワタクシか、あるいは大きくなったチビ
スケがこぼしたからだ。
「こういう細々したものを“名もなき家
事”というのよ。テレビでもやってた」
どうやら、NHKの「あさイチ」という
番組で取り上げられたらしく、その名前
が全国的に定着したらしい。
掃除、炊事、センタクなどはわかりやす
い家事なのですが、その他にも目立たな
い、存在に気づかない、地味な家事がた
くさんあるのです。
家事を担当する人は、やってもやっても
終わらない。やらなければどんどんたま
っていく。
放っておけばゴミ屋敷に。
彼女によれば、「ゴミ出し」というのは
各部屋にあるゴミ箱のゴミをまとめて、
黄色い袋(市の指定のプリペイド袋)に
入れ、燃やせるゴミであればその収集日
にゴミ収集所に出し、空になったゴミ箱
に新しいゴミ袋をかけるまでのことを
言うらしい。
もちろん、ゴミ箱にゴミの汁が漏れてい
たり汚れている場合は、当然それを拭く
などの作業も含まれる。
「テーブルを拭く」というのは、食後に
食器を片付けた後にテーブルを拭いて、
その拭いた布巾を洗ってタオル掛けにか
けるまでの工程。
これももちろん、食後床に落ちている
誰かの食べこぼしを拾うことも含まれる。
「トイレットペーパーを補充する」と
いうのは、トイレットペーパーがなくな
ったら買いに行って取り付けたり、その
他の在庫を棚に並べるところまで。
まだまだある。
缶やペットボトルの分別、お風呂の髪の
毛フィルターの掃除、脱ぎっ放しの服の
片付け、洗濯物をキレイにたたんで各部
屋の引き出しに収納。
ワタクシやチビスケが消し忘れた照明の
消灯、なかなか朝起きてこないチビスケ
を起こす作業、誰かがソファに寝っころ
んだ後でズリ落ちているソファカバーを
整えること。
やってもやっても終わりが見えない、名
もなき家事。
「ゴロゴロしないで手伝ってよ。一緒に
出かけてて一緒に家に帰った時くらい、
一人だけゴロテレ(ソファにゴロッとし
ながらテレビを見る)しないでよ・・」
という無言の視線と無言の声が聞こえる。
「ハイ!できるだけ手伝うようにします」
と無言の声で答える。
たまに気を利かせて手伝うと、「そこじ
ゃない。順番が違う」と彼女にますます
ストレスがたまる。
それなら自分でやった方が早いと。
そうして負のスパイラルに。
こうやって名もなき家事はズルズル続い
てゆくのデス。